夢日記 6月19日

夢見の悪い夢を見た。

 

園都市みたいなところに、とても大きなデパートがあった。老若男女利用できるが、客は学生が多かった。

僕たちは高校生だった。お昼時間には学校を出て、このデパートの飲食屋で食べるか、ここで弁当を買ってどこかで食べるかというのが僕たちの普通だった。

このデパートは、4階までがショッピングや飲食をするところで、4階~17階はホテルになっていた。どこもかしこも豪華で派手だった。エレベーターは近未来映画のような、とても明るい白い箱で、窓があってデパート内を見渡せた。最上階のはずの17階のボタンの上に、何故か423階のボタンがあった。スタッフルームなので、僕らはそのボタンを押してそこに行けても、入ることを止められるのを知っていた。わざわざそのボタンを押さない。

しかし、都市伝説があり、423階のさらに上に、なぞの階があるらしい。ボタンは無いが、いくつかの条件を満たせば行けるという噂だ。その条件がなんなのか、そこに行ったら何があってどうなるのかというのは全くわからなかった。ただ、423階より上があるという都市伝説だけがあった。

 

夢の中の僕…というより夢の主人公は、現実世界の僕とは容姿や性格も異なる女の子で、ちょっと見た目が派手だけど性格は明るくて付き合いやすい女の子と、天然ボケみたいな女の子と仲が良く、基本的に3人でつるんでいたが、2人のことを本当の友だちだとは思ってなく、昼休みは基本的にひとりで過ごしていた。彼氏もいたが、彼氏のことも好きなようでいて心の底から好きだというわけではなかった。

ある日、学校の国語の課題で、「自分のダメなところと向き合う」という作文を書かされた。学校の作文というのはふつう、自分自身を良く見せるような、綺麗事のような作文を書かされるが、この国語の教師がそれを嫌っていて、嘘偽りない僕たちの本音を書かせたいと思った上でのテーマだった。

夢の中の僕(もはや別人なんだけど、便宜上、僕と書く)は、はじめ、「道で出会った身体障害者のかたを助けたかったけど、手を差し出せなかった」というようなことを書いた。実際そういう場面に立ち会ったことはなかったし、嘘だった。「自分のダメなところと向き合う」というテーマなのに、身体障害者のかたを手助けできなかったけど、手助けしようという気持ちはあったんだよ、みたいな結局自分を良く見せようとするクセが出てしまっていると途中で気づき、全部捨てた。

自分のダメなところはいっぱいあって自覚もしているはずなのに、それを紙に書き出して学校に提出するというのは存外に難しいことだと悩み、真っ白な原稿用紙を睨みつけたまま授業が終わった。スラスラ書けてる子もいたが、少数名は僕と同じように悩んでいたようだった。先生はそれを見越していて、次の時間も引き続き同じことをすると言った。

 

この授業のあとがお昼時間だった。僕は例のデパートにひとりで行った。国語の課題が思ってた以上にダメージとなっていて、僕はぼんやりとしていた。

エレベーターに乗った。僕以外に、2、3人の人がいた。ボタンのランプは、2階と3階と4階についていた。しかし、2階を素通りしてしまい、僕は「ん?」と思ったし、他の乗客も「ん?」という雰囲気を出しながらも誰も何も言わなかった。3階も素通りしたところで身じろぎをしだす人がいて、4階を通り過ぎた時に、おじさんが「おいおい…」と言った。エレベーターは普通のペースでホテル階まで突入し、「おいおい」と言ったおじさんが、怒ったふうにしながら非常用ボタンを押し、マイクに向かってエレベーターの不調を伝えようとした。その瞬間、エレベーターがガタンと揺れてガガガガガという激しい音と振動を立てながら上昇していった。エレベーターの窓の外を見ると、デパート内の風景からホテル内の風景になり、その後はなんだか暗い、スタッフ用階段みたいな風景が続いた。エレベーターに乗り合わせた人々がざわついた。すると、僕の頭の中に直接響くように、「ここまで来なさい」という女性の声がした。僕は他のお客さんを見たが、他の人にそれが聞こえてる様子はなかった。

エレベーターは423階で止まった。ドアが開くと、ホテルスタッフなのか、執事風のおじいさんがエレベーターのすぐそこに立っていて、僕たちにエレベーターの不調のお詫びを告げた。このエレベーターは故障しているから、別のエレベーターから降りるように案内された。他の乗客は文句を言いながら降りたが、僕は降りてはいけない気がして中に残った。執事風のスタッフは僕を見たが、降りるようには促さなかった。

僕を残してエレベーターは閉まり、さらに上昇した。エレベーターの窓の外は真っ白になり、箱の中が完全に真っ白な空間になった。都市伝説の、423階よりも上の階に行くんだな…と思った。少し怖くなって降りたくなったが、エレベーターはどこかについて扉が開いた。

その後の記憶が無い。気がついたら次の日になっていて、国語の授業を受けていた。夢がスキップされたのではなく、夢の中の僕にもあの後の記憶が無いままに国語の授業になっていたが、たいして疑問には思わなかった。そういうものだと思った。あそこで何があったかは覚えてないが、また行かなくてはという使命感のようなものがあった。

この日は自分のダメなところがスラスラと書けた。友だちや彼氏を心の底から好きではないこと、自分の信念とは合わない考えを持っている人のことを死ねばいいというくらい軽蔑していること。最後に、遺書っぽい文章を書いて提出した。

国語の授業の次に体育の授業を受け、その後に昼休みだった。僕はまたひとりでデパートに行った。昼ごはんを食べる為ではなく、あの場所に行くためにエレベーターに乗った。今日はエレベーターに乗っているのは僕1人だった。ボタンは押さなかったが上昇した。エレベーターの窓を覗くと、彼氏が友だちとふざけ合いながらご飯を食べているのを見つけた。僕は、「〇〇くん、ごめんね」とつぶやいた。

瞬時に、僕はそれがいけなかったと察した。何が悪いのかは具体的にはわからないが、そういうことを思ったり口に出してはいけなかったのだ、と思った。エレベーターが開き、他の乗客が乗ってくる。僕を合わせて5人だ。僕を合わせて女が2人、男が3人。全員学生だった。その内の女の子のことは知っていた。僕はその子が嫌いだった。ワガママでビッチだったから、根本的に合わない子だった。

エレベーターはデパート階、ホテル階を通過したあと、先日のようにガガガガガガと音を立てて、猛スピードで上昇した。しかし、今日の5人は誰も、昨日乗り合わせた乗客のようには慌てなかった。みんな、これがどこに行くのか知っているようだった。

しかし、ガタンッと大きく揺れて、エレベーターは途中で止まった。ドアが開くと、昨日執事風のスタッフがいた423階でもなく、その上のなぞの階でもなく、そこは薄暗い階段のあるフロアだった。そこで初めて、僕を含む5人ともが動揺した。

エレベーターからは死角となっていた扉の横の方から、上品な感じのおばさんが歩いて出てきて、「残念ながらあなたがたは失格です」と言った。昨日「ここまで来なさい」と頭の中で響いた声と同じだった。僕たちは全員、絶望した顔をしていたと思う。ビッチの女の子が泣き出した。

男の子が、「どうして!」と怒鳴った。とても興奮していて、「説明しろよ!」と言いながらおばさんに掴みかかろうとした。おばさんはそれをやんわりといなしながらも、黙って何も言わなかった。

僕もパニックのようになり、おばさんの足元にすがりついた。「お願いします!どうしたらいいんですか?!どうしてもあそこに行きたいです!どうしても行かなきゃいけないんです!お願いします!行かせてください!」と泣いて懇願した。そしたら、僕の他の4人も(あの怒ってた男の子も)、おばさんの周りにワラワラとひざまずいて、泣きながらお願いした。

すると、おばさんは、階段を降りなさいと言った。「失敗した階まで降りて、そこからまたエレベーターに乗り直しなさい」と言った。失敗した階、というものの説明はなかったが、僕は、彼氏に謝罪を呟いた階のことだとわかった。ほかの4人も思い当たるところがあるような顔をした。

続けておばさんは、「つかまらないように走りなさい。絶対につかまってはいけません。その後のことは責任はとれません。自分たちでなんとかしなさい」と言った。何につかまってはいけないのか、それも説明がなかったが僕達にはわかった。なんか、過去のトラウマ的なもののことだ。トラウマにつかまるな、とは、やけに抽象的だったが直感的にそれだとわかった。そして、僕たちはそれにつかまることを激しく恐怖した。でも、怖くても上に行かなくてはならない。男の子のひとりがパッと走り出し、僕たちもそれに続いて走り出した。

石造りの暗い階段をひたすら降りた。僕たちは何も言わなかった。うしろから、ぞわぞわとした気配を感じるので振り返れなかった。

ある階についた時、ひとりの男の子が、「俺はここだ」と言って、エレベーターに乗り込んだ。別の男の子が、「なんでこんな階で…」と言った。おそらくだけど、先程エレベーターに乗っていた間に、自分が暮らしていた生活に未練があるようなことを思った場所が、「失敗した場所」だ。だから僕にとってはデパートが見える階だし、他の子達の多くも「失敗した場所」はデパート階かホテル階だと思う。この階段しかない薄暗い場所は、ホテル階よりも上なので最低でも17階以上。僕たちはたくさん階段を降りなければならなかったので、こんな早くからエレベーターに乗り直せる男の子を羨ましく思った。上に行けるというのも羨ましいが、それ以上に、トラウマが追いかけてくる恐怖から早々と離脱できるのが羨ましかった。

 

ひとりが離脱し、残り4人になった僕たちは引き続き走って階段を降りていった。何階なのかはわからないが、少し広い階に出た。スタッフが休むところなのか、自動販売機と丸いテーブルとチェアがある。ホテル階やデパート階まであと少しなんだとわかった。

すると、僕の後ろのほうで、誰かが転ぶ音がして「きゃあ」という声がした。僕は思わず立ち止まって振り返ってしまった。前を走っていた2人の男の子もそうだった。僕のはるか後ろのほうで、ワガママビッチの女の子が転んでいた。ほっといて進もうと思ったが、立ち止まってしまった僕たちは全員、ぞわぞわぞわとトラウマに飲まれた。

 

気がつくと、江戸時代の吉原で女郎が閉じ込められていたような赤い牢が続く空間にいた。僕は牢の外にいて、ゆっくりと牢をながめながら歩いてみた。

ある牢で、ワガママビッチの女の子が白装束を着せられ、鬼のような見た目のおじさんたちに強姦されていた。彼女は目を開けていたが、死んだようにピクリとも動かなかった。

別の牢で、一緒に走っていた男の子のひとり(最初におばさんに怒ってつかみかかろうとしてた子)が、これまた鬼のような見た目をしたヤクザ風の男たちにヘコヘコ土下座をしながら、靴をなめたり地面に顔をこすりつけたりしていた。

また別の牢では、もうひとりの男の子がひとりで、ほかの牢よりも光の刺さない真っ暗な牢の真ん中に直立させられていた。外から見るとただ直立させられているように見えるが、男の子の表情は恐怖にこわばっていて、全身がガチガチになっていた。目を見開いてどこでもないところを見ている。

僕は、ここは地獄だと思った。自分もきっとこんなふうにトラウマの牢屋に入れられるんだと思って、怖くなった。

しかし、僕は牢屋に入れられなかった。入れられなかったというより、僕を牢屋にぶち込もうとする看守?がいなかった。牢屋の中には人間や鬼がいたが、僕が歩いている牢屋の外側には僕以外に誰もいなかった。牢屋の中の鬼たちも、牢屋の中の人間をいじめるのに徹していて、僕のことは気にもかけなかった。

牢屋は延々と続いていて、果てがなかった。僕と一緒に走っていた子どもたちの他にも、たくさんの人間がつかまっていた。たくさんの人間たちが各々のトラウマに凌辱され、絶望しきった顔をしながらも死ねなくて苦しんでいるような顔をしていた。僕はそういう牢屋を、ひとつひとついちいち覗いた。自分のトラウマじゃなくても、見ているだけでとてもつらい気持ちになった。

しかし牢屋は延々と続いている。牢屋を見て延々と歩きながら、僕はひとつの事実に気づいた。

僕は、この牢屋を見るのを楽しんでいた。看守はいないのではない。僕が看守になっているのだ。そのことに気がついた瞬間、全身に脂汗がわいた。自分自身を嫌悪した。その時、目に入った牢屋を見ると、僕が入っていた。夢の主人公としての女子高生のことではなく、現実世界の僕だ。夢の主人公である女子高生は、容姿が違うがこの牢屋に入ってる僕を自分自身だと認識した。牢屋に入っている僕は、思いつく限りの拷問を自分で自分におこなっていた。腕を切ったり、舌をぬいたり、目玉の片方を刺したりしていた。血もいっぱい出ていたし、どう見ても痛いし致死の傷をおっているのだけども死なずにいて、ひたすらに自分を傷つけていた。

夢の主人公の僕は、はじめはそれを見てひどく心が乱されたけども、じっと見ているうちに牢屋の中の僕を罵倒するようになった。

もっとやれ、お前はそんなものでは許されない、他の牢屋のひとたちはお前のせいでもっとつらい思いをしている、それを喜んでいるお前は死ぬまで自分を罰するべきだ、どうしてお前は死なないんだ、早く死ね、早く死ねるくらいの傷をつけろ、こんな傷じゃ足りない、死んで詫びろ、というようなことを散々自分に投げつけた。牢屋の中の僕は泣きながら自傷を激しくしていったが死ねない。牢屋の外の僕も泣きながら罵詈雑言を強めるがきりがない。これが僕の地獄なんだと思い知った。

 

というところで目が覚めた。エレベーターの最上階はたぶん天国で、ほんとはそこに行きたかったんだと思う。

 

 

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